Los Angeles Recording

さかのぼること1980年代から、ロック・ミュージシャンにとって“海外レコーディング”はひとつの夢なのです。
気付けばデビューから14年、オリジナルアルバムは今回の『FAB LOVE』で通算8枚目。
そんなGRANRODEOも遂に遂に、やって来ました芸術の街ロサンゼルスへ!
ここでは昨年10月、名門キャピトル・スタジオにて行なわれた「Take it easy」「JUNK-YARD DOG」のレコーディングの模様を、写真と共にレポートさせていただきましょう。
まずは、e-ZUKAによる総括のコメントからどうぞ。

今回のレコーディングのお話をいただいたのは、ミニ・アルバム『M・S COWBOYの逆襲』制作直後。
あの名門“キャピトル・スタジオ”でレコーディングできるということで、めちゃ気合が入りました!
実は今回の2曲、超がいくつも付くほど一流の、レジェンドなミュージシャンの方々に参加していただいているんです!
とても光栄ですし、幸せに感じています。

「Take it easy」
最初にスタッフから、「ゆったりとしたテンポでクワイアやホーン・セクションが入るような曲はどうですか?」と提案があったので、ちょっとモータウンっぽいソウル的な楽曲をイメージして作りました。
ジェリー・ヘイさんのアレンジによるホーン・セクション、リック・ローガンさんのアレンジによるクワイア・セクションは本当に素晴らしくて、とても豪華なサウンドになっています。
あと残念ながらレコーディングの現場でお会いすることはできなかったんですが、トム・キーンさんのピアノも素晴らしいです。最高のコラボです!

「JUNK-YARD DOG」
当初ブルージーでアダルトなロック路線を考えていたんですが、せっかくヴィニー・カリウタさんとクリス・チェイニーさんが参加してくださるとのことなので、ちょっとクリームを思わせるような、トリオでのアップ・テンポなブルース・ロック風楽曲にしました。
疾走感のあるグルーヴが、とても気持ち良い楽曲になってます!
エンジニアのニック・リーヴスさんとアシスタントのジェフ・フィッツパトリックさんの人柄もとても良く、すごくプロフェッショナルで一緒に仕事をするのが楽しかったです。

海外レコーディングを経験したギタリストがよく「ギター・アンプの鳴りが違う!」って言うのを聞いていたので、楽しみにしてたんですが、あれって本当ですね。
音がめちゃくちゃ良くてびっくりしました。
ただ個人的には緊張もあったので、また機会があれば、次はもっと楽しみながらリラックスして演奏したいですね。

★10月10日午前10時30分(現地時間)

今回のGRANRODEOチームの宿泊先は、サンタモニカ湾の南端に位置する港町の1つ、レドンド・ビーチ。
マンハッタン・ビーチ、ハモサ・ビーチと合わせて“ビーチ・シティーズ”と呼ばれたりもします。
(直訳すると「海辺の都市群」。分かりやすいですね)
全米中から観光客が訪れるリゾート地ですが、10月は繁忙期から外れていたこともあってとても落ち着いた雰囲気。




★10月10日午前12時00分(現地時間)

1時間ほどかけて到着したのは、ご存知アメリカ映画産業の中心地であるロサンゼルス市ハリウッド。



ハリウッド大通りとヴァイン通りが交わるところからすぐ北の場所に、レコードを積み重ねたような円筒形の外観で有名な、キャピトル・レコードの本社ビルが建っています。
スタジオがあるのはもちろんこのビルの中。
かのフランク・シナトラが初めて録音を行なって以来、ナット・キング・コール、ビーチ・ボーイズ、ポール・マッカートニー、レイ・チャールズ、ブリトニー・スピアーズ、コールドプレイ…といった、あらゆるジャンルの超大物アーティストたちがここでレコーディングしてきました。





建物の中にはAからDまで、規模と設備の異なる4つのスタジオが設けられています。
今回使わせていただいたのはそのうちのスタジオB。
L.A.界隈で最も素晴らしいドラム・サウンドを録ることができるという、ロック向けの高品質なレコーディング・ルームが備えられているんです。





ピアノやヴォーカルなどの繊細な録音に使えるアイソレーション・ブースも併設。
優雅なラウンジやキッチンなどもあって、いかにもくつろぎながら創作に集中できそうな構造ですね。
ちなみに到着した時には既に、レコーディング・ルームのど真ん中にe-ZUKA用のギター・アンプ(キャピトル・スタジオが所有する年代ものです)が用意されていました。
何とも居心地良さそうなカーペットの上で機材を広げ、さっそくギターの弦を替え始めるe-ZUKA。
その裏で、KISHOWはスタジオ内を見回りつつ、前日のフライトで疲れた身体と喉をじわじわと温めます。





ほどなくしてベーシストのクリス・チェイニーさんが到着。
ジェーンズ・アディクションの一員として知られるクリスさんですが、もともとは1990年代初頭から活躍するセッション・ミュージシャンで、ジャズ系からポップス、ロックまでありとあらゆるジャンルに対応できる凄腕で知られています。
到着してすぐ自分の機材をセッティングし、そこから予習と練習を開始。



間を置かずにドラマーのヴィニー・カリウタさんも到着。
こちらも1970年代からフランク・ザッパを始めとする大物アーティストのバックで叩いてきた、売れっ子中の売れっ子セッション・ミュージシャンです。
とても人懐っこい雰囲気を持っている方で、スタジオの空気がパッと華やぎます。
この日の役者がそろったところで、改めてみんなでご挨拶。


★10月10日午後13時30分(現地時間)

この日行なうのは2曲分のベーシック・トラックの収録。
ベーシック・トラックとはつまり、曲の基本となるドラム、ベース、ギターですね。
それとボーカルレコーディングのテスト録音も一緒に行ないます。いいテイクが録れれば、そのまま本番に使うこともあります。

まずとりかかるのは、ちょっとジャクソン5っぽい雰囲気のある、ファンキーでポップな「Take it easy」。
デモ音源をみんなで聞いて予習した後、軽い打ち合わせを経て、すぐに準備に取りかかります。
e-ZUKAとヴィニーさんは一緒に広いレコーディング・ルームへ、KISHOWはマイクが立てられたアイソレーション・ブースへ、クリスさんはミキサー・ルームへ設置した自分の機材の前へ。
いよいよレコーディング開始です。







ちなみにあくまでも2人組ユニットのGRANRODEOですが、ロック系のナンバーではこのようにバンドのスタジオ・ライヴ形式で録ることも多いんです。
その方が一体感やグルーヴ感が出るし、お互いの演奏に触発されて新しいアイデアが出ることもあるんだとか。
まずは手早く2テイク録り終えると、みんなでいったんミキサー・ルームへ戻ってプレイバック。



クリスさん「このパートはこうじゃなくてこう?」
e-ZUKA「僕はこう弾いているけど、好きなように変えてもらって構わないよ」



ヴィニーさんは気になる箇所をいくつか譜面にメモをとっています。



こんな風に1回だけ確認タイムを取った後は、続けざまにテイク3とテイク4をレコーディング。
ここまで約1時間ですが、わずかな回数の間に尻上がりに完成度を高め、ギター&ベースの細部のニュアンスも、ドラムの鋭いオカズのタイミングも、完璧にハマって「Take it easy」のベーシック・トラックは録音終了!

★10月10日午後15時00分(現地時間)

30分ほどの休憩時間で巨大なハンバーガーをお腹に収めた後、続けて「JUNK-YARD DOG」のベーシック・トラックに取りかかります。
こちらは、e-ZUKAの解説の通り、トリオ・バンド風のシンプルな構成を持つアップ・テンポなブルース・ロック。
先ほどの「Take it easy」よりも細かくてテクニカルなフレーズが多いので、より時間がかかりそうですが…。
テイク1では細かいパートで食い違いがあったものの、一番難しそうなイントロは既に全員完璧。
エンディングがビシッと決まると、思わず4人の顔に笑みが浮かびます。
テイク2、テイク3も途中でぐちゃぐちゃっとなってしまったところはありましたが、テイク4は細部までキレッキレの素晴らしい完成度!
なんと今度はわずか20分でベーシック・トラックの録音を終了させてしまいました。
その後、クリスさんが気に入らなかったところを2カ所ほどダビングした後、すべて終了したのは16時17分。


★10月10日午後16時54分(現地時間)

プロフェッショナルなリズム隊のお二人がスタジオを後にしても、実はこの日のレコーディングが終わったわけではありません。
ここからe-ZUKAのギターのダビングという、孤独な戦いが待っているんです。
まずはアンプやエフェクターなど、諸々の機材をミキサー・ルームに移動させて…。



譜面を見ながら、
e-ZUKA「ここの箇所でこういう感じにギターを重ねたいんだよね」(日本語)
ニックさん「OK、わかった。やってみよう」(英語)
音楽の話だと、何故か言葉が違っても分かってしまうから不思議ですね。



ちょっとピリピリした雰囲気に見えますが、ベーシック・トラックを録り終えた余裕からか、合間合間でe-ZUKAらしい冗談も挟まっていたりします。
これも何故か通じちゃうから不思議。
マニアックに重ねて重ねて、すべてのギター・パートを録り終えたのが18時40分。おつかれさまでした!

★10月11日午後12時過ぎ(現地時間)

この日も前日と同じく、正午過ぎにスタジオ入り。
メインで行なうのは「Take it easy」のオーバーダビングです。
オーバーダビングとはつまり、昨日録ったベーシック・トラックの上に、色々な楽器の音を重ねて行く作業のことです。
まず行なうのはホーン・セクションのレコーディング。
アレンジを担当した、ジェリー・ヘイさんは幾多のグラミー受賞歴を持つ、アメリカ音楽会の重鎮中の重鎮です。
マイケル・ジャクソンの『THRILLER』や『BAD』のホーンを手掛けた、と言えば分かりやすいでしょうか。



4人編成のホーン・セクションも、それぞれベテランの実力派。
左側からトランペットのゲイリー・グラントさん&ウェイン・バージェロンさん、トロンボーンのアンディ・マーティンさん、サックスのダン・ヒギンズさんです。



13時過ぎから打ち合わせが始まり、その流れでいつの間にかレコーディング本番がスタートします。
「あそこのパッパラ~♪のところやってみようか」
プワ~♪
「OK!次行ってみよう」
みたいなノリでテンポ良く録音が進み、それでいて精度の高い演奏をどんどんキメていきます。
ところどころを繰り返し吹いて何重にも重ねたり、エンディングで延々と違うパターンを試したり。
e-ZUKA曰く「好きなように入れたいところに入れたもらった」とのこと。
間にお昼ご飯を挟んだりもしながら、15時45分にはすべて終了! 
ホーンのみなさんにも『M・S COWBOYの逆襲』を持って返っていただきました。


★10月11日午後16時05分(現地時間)

時間を空けず、KISHOWの歌録りに移ります。
前日はアイソレーション・ブースを使いましたが、この日はドラムのレコーディングに使った広い部屋の片隅に、マイクや吸音壁などをスタンバイ。



1度通して歌った後、本番はいくつかのパートに分けながら録って行きます。
実は時差ボケを引きずっていたKISHOWですが、どのパートも最大でもテイク3以内に収めて終了!
一方コントロール・ルームでは同時進行で、e-ZUKAとプロデューサーがOKテイクを細かくチェックしています。



16時52分に歌録り終了!

★10月11日午後17時00分(現地時間)

歌録りを手早く切り上げてしまったのは、クワイア(要はコーラス隊ですね)のみなさんが到着したから。
リーダーのリック・ローガンさんはディズニー作品の歌なども手掛けるトップ・セッション・シンガーで、JAM Projectの「Live True」のクワイア・アレンジなんかもやっていただいています。
下の写真の、帽子を被っている方ですね。
マイクは8人に対して5本。たっぷり使います。

ちなみにデモ音源のコーラスはe-ZUKAが英語っぽい謎の言葉で歌っていましたが(笑)、本番の歌詞に関してはリックさんにおまかせ。
そのすり合わせを軽く済ませた後、17時20分にはコーラス録りスタートです。



目の前で生で歌われると、かなりのド迫力!
ちなみに1回目と2回目の歌い回しをほんの少し変えて重ねることで、さらに分厚く広がりのある音に聞かせることができるそうです。プロの技ですね。
録音は19時に終了。もちろんみなさんとも最後に記念撮影させていただきました。



…といった具合にバタバタと駆け足でお送りしたL.A.レコーディング・レポート、いかがだったでしょうか?
「海外レコーディング」と言えばなんだか華やかなイメージがありますが、実際はこんな風に地道でシビアな作業を、短時間で一気にこなしてしまわなければいけないんですね~。
GRANRODEOのお二人はもちろん、様々な方々のご尽力で出来上がった入魂の『FAB LOVE』、どうぞお楽しみください!

レポート・坂東健太(ヤング・ギター編集部)